鈴木真太郎著「古代マヤ文明」

先日BS4Kで「古代マヤ大発掘」という番組が放映されていたのでなんとはなしに見ていた。見ていると言ってもたいていは他のことをやりながらなのでほとんど頭に入っていないのだけれど、たまたま作業の切れ目で「ここの遺跡はその業績が分かっていない〇〇王のものではないかとされています(全然正確ではなし)」というようなことを言っているのを聞いて「ムムっ!?」と思った。ということは、ある王朝で連続してだれがどういうことをやったか分かっている、つまり古代エジプト王朝並みには知見がそろいつつあるのか?
こう思ってしまうのは、自分が子供の頃は古代マヤ文明というのは文字もまだ十分解読されておらず、ややオカルト的な扱いをされる、でも逆にその分わくわくする魅力のあるものだったのけれど、この番組によるともういつどこでなんという王朝の誰がどんなことをしたのか分かってきた、ということらしい。ということで、ここ何十年もの知見が反映されているに違いない鈴木真太郎著「古代マヤ文明」を題名だけでAmazonで買ってみた。
期待していたのはもっと歴史物だったのだけれど、この著者は考古学者の中でもbioarchaeologyというちょっと変わった分野の学者で、血沸き肉躍る系の話を書く人ではないのであった。bioarchaeologyというのは自分が理解したところによると、人骨が発掘された状況を精細に情報収集しつつ、骨の状態や同位元素の分析を行うことでその人の出身地や生活歴、死亡時の状況を推測し、それらの情報を地域にわたって多くの人の分、統合することで当時の社会状況を理解する一情報として寄与するための分野、ということらしい。なので第6章はやや普通の歴史ものっぽいけれど、後はもうちょっと学問的な色彩が強いものとなっており、若干読みにくいかもしれない。
でもそのうちに、マヤ文明を舞台にした歴史小説を書いてくれる人が出てくるのではないかなー、ということをほんのり期待させるくらいにはいろいろと輪郭が分かってきた、ということが分かって個人的には興味深かった。